土と水ホールディングス Webマガジン
Vol.7 ワインきのこ株式会社(山梨県山梨市)
・地域資源と経済の循環を目指しています

ワインきのこ株式会社は令和元年に事業を開始した比較的新しい会社です。山梨県は甲府盆地北東部の山梨市内、盆地部から少し峠を上ったところにあります。社屋の脇には兄川が流れ、山あいの田畑に囲まれているのどかなところです。
社屋は40年ほど前に養蚕施設として建てられ、平成の間は倉庫になっていたものを改装しました。
これまで再利用方法の乏しかったワインの搾りカスを原料に使ってシイタケを栽培し、地域資源の循環と経済の循環を目指しています。
・ワインの力によってきのこが早く元気に育ちます

シイタケは菌床に種菌を植え付けて栽培をします。菌床は通常、おがくずと米ぬか等の栄養剤、水を混ぜて固めますが、ここにワインの搾りかすを加えているのがワインきのこの最大の特徴です。
弊社の立地する峡東地域(山梨市、甲州市、笛吹市)は国内随一のブドウ産地です。そのため数多くのワイナリーが操業し、搾りかすの調達が容易です。これまでワインの搾りかすはほとんどが土に返すか産業廃棄物となっていましたが、きのこの成長を加速し元気に育てられることがわかりました。この現象を平成29年に発見し令和5年2月には本技術について特許が成立したところです。
・資源の循環

ワインの搾りかすは天然物なので土に返ります。しかし、そのまま畑の土に返すだけでは農業には不適で、多量の化学肥料を使って土壌の質を調整することが必要になります(窒素分が少なく土壌の酸性化を促すため)。
搾りかすを一度きのこ栽培に活用し、収穫後に生じる廃菌床を土に返すことによってこの問題を大きく改善できる可能性があります。廃菌床は窒素分が豊富で中性に近いので追加する化学肥料は格段に少なくてすみます。
現在地元の農協や福祉系事業者と連携して廃菌床の堆肥化を進めています。作られた堆肥を畑に施せば、ブドウ、ワイン、搾りかす、きのこ、堆肥、またブドウとなって資源の循環ができるようになります。
・機械化と経済の循環へ

かつて、弊社の立地する山梨市水口の周辺はきのこの産地でした。今ではほとんど栽培されていませんが、地元の方々は懐かしみながら暖かく迎えてくださっています。一方で山間部ということもあり、人口が減って周辺はだんだん寂しくなってきています。
世界に目を向けると人口減少下にあっても経済成長している国は多くあります。これらの国々は機械化により生産性を上げて対応しています。弊社でも多くの機械を導入し空調栽培を行っていますが、今後ますます機械化・効率化が求められていく時代になってきています。資源を循環し無駄の減少に努めながら経済の循環にも貢献できるよう地域と共に歩んでいきたいと考えています。